鉄骨造と鉄筋コンクリート造のマンションの防音性比較 どちらが優れている?
みなさん、こんにちは!
大阪を中心に関西の防音室の設計・工事をしている創和防音です。
今回の記事では鉄骨造(S造)の建物と鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションについてどちらの方が防音性が優れるのか?について書きたいと思います。
また、マンションの構造の中で鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)というものがありますが、これは防音性の観点から見た場合鉄筋コンクリート造(RC造)とほぼ変わりませんので同じものと思って読み進めて頂ければと思います。
まずはそれぞれの構造に関する基本事項からおさらいしたいと思います。
■鉄骨造と鉄筋コンクリート造の違い
●鉄骨造の特徴
鉄骨造(S造)は、鋼材を主な構造材として使用する構造です。
鋼材は軽量で強度が高いため、建物全体を軽く造ることができ、自由度の高い設計が可能です。
マンションなどの場合では家賃相場は安い傾向にあります。
主に商業施設や高層ビルなどに使用されます。
●鉄筋コンクリート造の特徴
鉄筋コンクリート造(RC造)は、鉄筋を組み込んだコンクリートを使用する構造です。
圧縮力に対して強いコンクリートと引張力に対して強い鉄筋を組み合わせることで、高い耐久性と強度を持ちます。
鉄骨造に比べると建物自体の重量が大きい傾向にあります。
マンションなどの場合では家賃相場は高い傾向にあります。
主に住宅やマンション、公共施設などに使用されます。
■防音のメカニズム
次に、防音のメカニズムについて確認しておきたいと思います。
●音の伝達と遮音の仕組み
音は空気中や建物の構造体を通じて伝わります。
遮音とは、この音の伝達を遮断することです。
遮音性能は、建物の構造や材料の特性によって大きく左右されます。
●建築材料が防音性に与える影響
一般的に建築材料の重さ、密閉性が防音性能に影響を与えます。
密度が高く重さがあり、密閉性がある建築材料は音の伝達を抑える性能が高いと言えます。
■鉄骨造の防音性
●鉄骨造の遮音性能の特徴
鉄骨造は軽量であるため、遮音性能が劣る傾向があります。
また、鉄骨造は柱梁・壁・床などが別々の材料で構成されており、密閉性の面においても不利になりがちです。
そのため鉄骨造は音を伝えやすい構造であると言えます。
●鉄骨造の防音性を高める方法
鉄骨造の防音性を高めるためには、遮音材や吸音材の使用、二重壁構造の採用、床や天井の防振対策(浮き構造)などが効果的です。
※「浮き構造」って何?と思った方はこちらの記事で解説しております。
■鉄筋コンクリート造の防音性
●鉄筋コンクリート造の遮音性能の特徴
鉄筋コンクリート造は、密度が高く重たいため、遮音性能が優れています。
また、鉄筋コンクリート造は柱梁・壁・床などが一体となっていることがほとんどであり密閉性にも優れています。
そのため鉄筋コンクリート造は音を伝えづらい構造であると言えます。
●鉄筋コンクリート造の防音性を高める方法
さらに防音性能を高めるためには、鉄骨造と同様に遮音材や吸音材の使用、二重壁構造の採用、床や天井の防振対策(浮き構造)などが効果的です。 ※「浮き構造」って何?と思った方はこちらの記事で解説しております。
■マンションでの防音性の違い
●鉄骨造マンションの防音性評価
鉄骨造マンションは隣室や上下階からの音が聞こえやすい傾向があります。
特に、生活音や足音が問題となることが多いです。
●鉄筋コンクリート造マンションの防音性評価
鉄筋コンクリート造マンションは、高い遮音性能を持つ傾向にあります。
隣室や上下階からの音がほとんど気にならない場合が多いと言えます。
しかしながら、マンションにより壁厚やスラブ厚は異なるため、壁やスラブが薄い場合は隣室や上下階からの音が気になる場合もあります。
また、自室と隣室を隔てる壁(界壁)が鉄筋コンクリート造ではなく乾式壁(石膏ボードなどを使って作られた壁)やGL工法と呼ばれる方法で仕上げられた壁の場合は遮音性能が劣る可能性などもあります。
■簡単にできる防音対策の具体例
●鉄骨造での効果的な防音対策
鉄骨造の防音性を向上させるためには、以下の対策が効果的です。
床に防振マットを敷く
二重窓を設置する
扉・窓の隙間を埋める
※よくネット上で壁に吸音材を沢山貼る対策を見かけますが、遮音上大きな効果はないため注意が必要です。(効果が全くないわけではありません。)
●鉄筋コンクリート造での効果的な防音対策
鉄筋コンクリート造でも、鉄骨造の場合と同じ対策が効果的です。
■物件選びのアドバイス
●物件選びの前提条件
鉄筋コンクリート造は高い防音性能を持っている傾向にあるため、防音性を重視する場合には必ず鉄筋コンクリート造を選びましょう。
●部屋選びの際の防音性のチェックポイント
部屋を選ぶ際には、防音性を確認するために以下のポイントに注意しましょう
【界壁の材質がコンクリートかどうか確認する】
壁を叩いた時に音が響いたら石膏ボードの可能性が高いと言えます。
逆に音が響かない場合はコンクリートの可能性が高いです。
界壁の材質はコンクリートの場合の方が防音性に優れることが多いため要チェックです。
【実際に部屋で音の聞こえ方を体験する】
内見の時に運が良ければ上下左右の住人がいるタイミングに遭遇出来る時があります。
その時は住人の生活音がその部屋の中でどう聞こえてくるかわかりますので、どれくらいの音が聞こえてくるのか必ずチェックしておきましょう。
■まとめ
●鉄骨造と鉄筋コンクリート造の防音性の総括
鉄筋コンクリート造の建物は一般的に高い遮音性能を持っています。
一方、鉄骨造の建物はその一般的に遮音性能は低い傾向にあります。
なお、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の防音性は鉄筋コンクリート造(RC造)と同じ傾向にあります。
●どちらが優れているかの結論とおすすめ
防音性を最優先する場合、鉄筋コンクリート造(もしくは鉄骨鉄筋コンクリート造)の建物を選ぶことをオススメします。
●鉄骨造・鉄筋コンクリート造の比較表
鉄骨造 | 鉄筋コンクリート造 | |
防音性 | 低 | 高 |
家賃相場 | 安い | 高い |
主な材料 | 鋼材 | コンクリート(+鉄筋) |
主な用途 | 住宅 商業施設 | 住宅 公共施設 |
■おまけ
●鉄骨造のアパートに住んだ時の経験談
昔、学生時代に鉄骨造のアパートに住んでいた経験がありました。
鉄骨造のアパートを選んだ理由は、
家賃が安かった
木造よりも防音性が良さそうだから
上記の2点でした。
しかし、住んでから後悔しました。
というのも、とてつもなく防音性が低かったためです。
もちろん、全ての鉄骨造のアパートがそうだと言うつもりはありませんが、当時自分が住んでいたアパートの防音性は本当に酷く、隣の住人が見ている映画の内容がわかる程でした。
(アウトレイジを見ていたようで、夜中にビートたけしの恫喝が聞こえてきました。)
また、これに関してはその隣の住人がかなりの大音量を出す人だったということも影響しているとは思いますがそれを差し引いても当時住んでいた鉄骨造のアパートの防音性の低さは酷かったと思います。
他にも、
アパートの階段を上る音が部屋の中に轟音のように響いてくる
隣の部屋ではなく斜め前の部屋のTVの音が聞こえてくる)
隣の部屋の住人のくしゃみで起床する
そんな経験があったため、「次住む部屋は必ず防音性の良いマンションにしよう」と誓い、部屋選びの際は「鉄筋コンクリート造」の建物に絞って探していました。
結果として今は防音性の良い部屋を見つけることができ、満足しています。
●「ALC造」とは?
賃貸物件を探すサイトなどで建物の構造を選んで絞り込んで検索することが出来ると思いますが、その際に「ALC造」というものが出てくる場合があります。
「ALC造ってなに?RC造の仲間?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これは「鉄骨造」のことです。
(鉄骨造の外壁にALCパネルが使用されている建物を「ALC造」と呼称しているようです。)
ですので、防音性を重視して物件を探している人は「ALC造」を選んでしまわないように注意しましょう。
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