鉄骨造の建物で防振対策は有効?
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鉄骨造の振動特性と防振設計
フィットネスジムやダンススタジオ、音楽スタジオなどでは、床の振動による騒音トラブルが問題になることがあります。特にテナントビルや商業施設では鉄骨造(S造)の建物が多く、「鉄骨造の建物でも防振対策は効果があるのか」というご相談をいただくことが少なくありません。
床衝撃音や振動の問題は、仕上げ材だけではなく、建物の構造そのものが大きく影響します。そのため、鉄骨造の建物ではどのような振動特性を持っているのかを理解することが、防音・防振設計を考えるうえで非常に重要です。
今回は、鉄骨造の振動特性と防振設計の考え方について解説します。
重量床衝撃音とは何か
建築音響の分野では、床衝撃音は大きく「軽量衝撃音」と「重量衝撃音」に分けられます。
軽量衝撃音とは、スリッパの足音や物を落とした際の軽い衝撃など、比較的高い周波数の音を指します。一方で重量床衝撃音とは、子どもが飛び跳ねる音やトレーニング器具の落下音など、低い周波数成分を多く含む衝撃音です。
この重量床衝撃音の特徴は、床の仕上げ材よりも、床スラブの厚さや梁の構造など、建物の構造条件によって性能が決まる点にあります。実際に集合住宅では、構造的な強度だけではなく、重量床衝撃音を抑えるために床スラブの厚さが決められるケースも多くあります。
そのため、床衝撃音の問題を検討する場合には、建物の構造形式そのものを理解することが重要になります。

鉄骨造と鉄筋コンクリート造の違い
一般的に集合住宅やマンションでは鉄筋コンクリート造(RC造)が多く、床衝撃音の研究もRC造を対象としたものが中心です。しかし、テナントビルや商業施設では鉄骨造が多く採用されています。
鉄骨造とRC造の大きな違いは、床と梁の関係です。RC造では、床スラブと梁が同じコンクリートで一体化した構造となっています。そのため、梁は床スラブの振動を比較的強く拘束します。
一方、鉄骨造では床スラブはコンクリートで構成されるものの、梁は鉄骨で構成されています。このため、床スラブと梁の振動特性がRC造とは大きく異なります。この構造的な違いに着目し、鉄骨造の振動特性について検討が行われています。
鉄骨造は衝撃音性能が良い場合がある
鉄骨造とRC造の集合住宅において重量床衝撃音を実測し、床スラブ厚との関係を比較しています。
その結果、同じ床スラブ厚で比較した場合、鉄骨造の建物の方が重量床衝撃音レベルが小さい傾向が見られました。特に床スラブが薄い場合には、その差が顕著になることが確認されています。
これは一般的なイメージとは異なる結果かもしれませんが、鉄骨造の振動特性を考えると合理的な結果でもあります。
鉄骨造の振動特性
この違いの理由として指摘されているのが、鉄骨梁のねじれ特性です。
RC造では梁が床スラブの振動を拘束するため、振動エネルギーが比較的局所的に集中します。しかし鉄骨造では梁のねじれ剛性が比較的小さいため、床スラブの曲げ振動を強く拘束しません。その結果、床に加わった振動は梁を越えて隣接するスラブにも伝わりやすくなります。
つまり、鉄骨造では振動エネルギーが広い範囲に分散するため、加振された床スラブの振動速度が小さくなり、結果として直下室での衝撃音レベルが小さくなる傾向があると考えられます。
ただし振動は広がりやすい
一方で、この振動特性は別の問題も生みます。振動が広い範囲に伝わりやすいということは、建物全体に振動が広がる可能性があるということです。
例えば、ジムのウエイトトレーニングエリアで発生する衝撃振動は、直下だけでなく、梁を越えて隣接するスパンへ伝わることがあります。そのため、斜め下の部屋や離れた区画でも振動が感じられるケースがあります。
このような理由から、鉄骨造の建物では床構造の振動対策が非常に重要になります。
鉄骨造で重要になる防振床
鉄骨造の振動問題に対しては、床構造そのものに防振性能を持たせる方法が有効です。代表的な方法としては、床を構造体から浮かせる「防振床(浮き床)」があります。
防振床では、防振ゴムやスプリングなどの防振材を用いて、衝撃力が建物の構造体に伝わる前に振動を減衰させます。これにより、床衝撃音や振動を大幅に低減することが可能になります。
特に以下の用途では、防振床の設計が非常に重要になります。
フィットネスジム
ダンススタジオ
音楽スタジオ
ライブハウス
ドラム練習室
これらの用途では、床に大きな衝撃力が加わるため、床構造の設計が騒音対策の成否を左右すると言っても過言ではありません。
鉄骨造では事前検討が重要
鉄骨造の建物では、振動特性が梁配置やスラブ形状などの構造条件に大きく影響されます。そのため、施工前にサンプルなどを用いて事前に検討を行うことが望ましいとされています。

まとめ
鉄骨造の建物は、RC造とは異なる振動特性を持っています。鉄骨梁は床スラブの振動を拘束しにくいため、振動エネルギーが広い範囲に分散し、条件によっては重量床衝撃音が小さくなる場合があります。
しかしその一方で、振動が建物全体に広がりやすいという特性もあるため、用途によっては床構造の振動対策が不可欠になります。
特にジムやダンススタジオなどの用途では、防振床や構造検討を含めた総合的な設計が重要になります。
こちらのブログ記事は以下の論文を参考に弊社が行なった測定結果など、独自のデータとも検証をし作成されました。
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〈この記事を書いたライター〉 創和防音 編集部
創和防音は一級建築士・騒音振動公害防止管理者・一級施工管理技士など建築のエキスパートをはじめ、音楽大学卒業・元大手楽器メーカー勤務の楽器のエキスパートが在籍する防音工事専門会社です。


