重量鉄骨造と軽量鉄骨造の防音性比較 どちらが優れている?
みなさん、こんにちは!
大阪を中心に関西の防音室の設計・工事をしている創和防音です。
引っ越しなどの際にお部屋探しサイトなどで部屋を探している時に「防音性」を気にしたことはあるでしょうか?
実は集合住宅において発生する苦情の多くは「騒音」によるものです。
そのため、お部屋を選ぶ際に防音性は非常に重要な要素の一つであると言えます。
特に都市部や交通量の多い地域では、防音対策がしっかりとされている部屋の方が良いですよね。
基本的に、防音性を重視したお部屋探しの場合は鉄筋コンクリート造(RC造)か鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の部屋を選ぶことをオススメしています。
これは、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造は防音性が高い傾向にあるためです。
逆に、鉄骨造は防音性を重視する場合はオススメしていません。
なぜなら鉄骨造は基本的に防音性が低くなるためです。
これらの理由についてはこちらの記事で紹介していますので一度読んでみてください。
しかしながら、RC造やSRC造は家賃が高い傾向にあり、どうしても予算をオーバーしてしまうといった理由で鉄骨造のマンションを選択肢に入れたい場合もあると思います。
そんな方に向けて、今回は重量鉄骨造と軽量鉄骨造の防音性の違いについて解説したいと思います。
まずは重量鉄骨造と軽量鉄骨造それぞれの基本事項についておさらいしたいと思います。
■重量鉄骨造とは
重量鉄骨造は、主に厚さ6mm以上の鉄骨を使用した構造です。
商業ビルや高層マンション、公共施設など、大規模な建築物によく採用されます。
重量鉄骨は、その高い強度と耐久性により、大きな荷重を支えることができます。
出典:JFE条鋼株式会社
(上の画像は重量鉄骨造の柱や梁に使用されるH形鋼です)
■軽量鉄骨造とは
軽量鉄骨造は、厚さ6mm未満の鉄骨を使用した構造です。
一般的には住宅や小規模な建物に多く使われています。
軽量鉄骨は、施工が比較的容易であり、コストも抑えられるため、広く普及しています。
出典:株式会社中山製鋼所
(上の画像は軽量鉄骨造に使われる軽量形鋼の画像です)
■重量鉄骨造と軽量鉄骨造の防音性の違い
●床の構造
重量鉄骨造は、使用される鉄骨の厚さと質量が大きいため、床版にデッキスラブを使用していることが多いです。
デッキスラブとは鉄板の上にコンクリートを打設した床版のことで、コンクリートを使用している分、防音性に寄与します。
出典:JFE鋼材株式会社
(上の画像はデッキスラブの一例です)
一方、軽量鉄骨造はデッキスラブのような重たい床版を採用することはほとんどありません。
軽量鉄骨造ではALCパネルなどの比較的軽量な材料を使って床版を構成していることが多いため、防音性は低くなる傾向にあります。
ALCパネルとはコンクリートをオートクレーブ養生(高温高圧蒸気養生)して作られた建材であり、この養生方法によってコンクリート内に無数の気泡が生まれるため普通のコンクリートに比べて軽量になります。
出典:ALC協会
(上の画像はALCパネルの画像です)
●壁の構造
マンションにおける部屋と部屋を仕切る界壁の構造については、基本的に重量鉄骨造と軽量鉄骨造との間で大きな差は無いと思われますが、重量鉄骨造の方が大きな荷重に耐えられることから界壁についても防音性の高いグレードのものを設置しやすいのは重量鉄骨造の方であると言えます。
(全ての建築材料に言えることですが基本的に重量が大きいものほど防音性は高くなります。)
出典:吉野石膏
(上の画像は石膏ボードを使った乾式遮音壁の例です)
部屋と部屋を仕切る界壁はこのような乾式遮音壁が設置されていることが多いですが、この乾式遮音壁の遮音性能を上げる場合は更に壁の層を増やしたり石膏ボードの厚みを増したり枚数を増したりしていきます。
つまり、遮音性能を上げれば上げる程壁自体の重量が増えていきます。
このことから界壁についてもより大きな荷重に耐えることが出来る重量鉄骨造の方が防音性に優れる可能性が高いと言えます。
●天井の構造
天井の構造についても先程記載した「壁の構造」の内容と同様と考えてもらって大丈夫です。
■まとめ
重量鉄骨造は、大きな荷重に耐えることが出来るため防音性能の高い材料を使うことが出来る分防音性に優れる傾向があると言えます。
一方、軽量鉄骨造は、重量鉄骨造に比較してあまり大きな荷重に耐えることが出来ないため防音性に優れる材料を使いづらい分、防音性に劣る傾向にあると言えます。
■おまけ
本編では防音性を重視したお部屋探しをしている人に向けて軽量鉄骨造と重量鉄骨造の防音性の比較を行ってきましたが、実際には鉄骨造のマンションは重量鉄骨造であることがほとんどです。
というのも軽量鉄骨造はあまり大規模なものを作られることが無いためそもそも軽量鉄骨造のマンション自体が少ないです。(住宅の場合ほとんどが一軒家での採用です)
そのため、お部屋探しの際に出てくる鉄骨造のマンションのほとんどは重量鉄骨造の可能性が高いのであまり気にする必要はないかもしれません。
ですが、万が一選んだ部屋が軽量鉄骨造だった場合はこの記事の内容を思い出して慎重に検討して頂ければと思います。
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