【図解】ΔL等級とは?~床材の床衝撃音低減性能を表す指標~
- sowa
- 4月14日
- 読了時間: 6分
みなさん、こんにちは!
超高性能乾式防振床「ドンナラン」の開発・設計・工事を行っている株式会社創和設計です。
みなさんは「ΔL等級」という言葉を見聞きしたことはありますでしょうか?
あまり馴染みのないワードですが、床の防音対策を考える人にとっては非常に重要なワードとなります。
今回の記事では床材の防音性能の表示に使われる「ΔL等級」について図を使いながらわかりやすく解説したいと思います。
■ΔL等級とは?
ΔL等級とは、その床材の設置前後で床衝撃音をどれだけ低減できたか?を計測し指標にしたものです。
※ΔLは「デルタエル」と読みます。
例えば、何も床材が設置されていないコンクリートスラブの上で床衝撃音発生させた際の下階での音の大きさが60dBだったとします。
その後に、コンクリートスラブの上に床材を設置し、床衝撃音を発生させた場合の下階での音の大きさが40dBだったとします。
この場合、床材を設置したことによって「20dB」音を低減できています。
この「低減できた音の量」を評価して等級にしたものがΔL等級です。

ΔL等級が高い程、その床材の防音性能が高いことを示します。
(なお、「低減できた音の量」のことをΔLと呼びます。)
なお、ΔL等級には床衝撃音の種類に応じる形で以下の2種類があります。

「ΔLL等級」・・・軽量床衝撃音に対する等級
⇒LLはLight Levelの略
「ΔLH等級」・・・重量床衝撃音に対する等級
⇒LHはLevel Heavyの略
床衝撃音の種類については詳しくはこちらの記事で解説しています。
床衝撃音の種類をここで簡単に説明すると、
軽量床衝撃音はコインやスプーンなどの軽くて硬い物が床に衝突する際に発生する音で、
重量床衝撃音は足音や人が飛び跳ねた際に発生する柔らかくて重い物が床に衝突する際に発生する音のことです。
これらは同じ床衝撃音でも特性が異なることから区別されています。
そのため、ΔL等級でも2種類の床衝撃音に応じて2種類に分かれているのです。
以上がΔL等級の解説になりますが、ここまでの解説を1枚の画像にまとめてみました。

<ポイント>
ΔL等級は「ΔLL等級」と「ΔLH等級」の2種類に分かれている。
等級の数字が大きい程性能が高いことを示す。
■【番外編】ΔL等級が生まれた理由~元々は別の指標があった~
ここからは番外編になります。
興味がある方はぜひ読んでみて下さい!
●元々あった床の防音性能の指標「遮音等級L値」
実はΔL等級が生まれる前に、床の防音性能を評価する指標が既にありました。
それは「遮音等級L値」と呼ばれるものです。
遮音等級L値についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
遮音等級L値について簡単に説明すると、遮音等級L値は「空間全体」を対象に床衝撃音に対する遮音性能を評価する指標です。
ΔL等級とかなり似ているように感じますが、両者の違いは「床材」を対象としているか「空間全体」を対象にしているか、の違いです。
ΔL等級の評価対象・・・床材
遮音等級L値の評価対象・・・空間全体
文字だけではわかりにくいと思うので図を用意しました。
ΔL等級は下の図の通り、床材のみを評価しています。

しかし、遮音等級L値では下の図の通り、上下階の「空間全体」を評価しています。

これが両者の大きな違いです。
そして、この違いが「ΔL等級」を生み出した理由に関わっていきます。
●ΔL等級が生まれた理由
では、なぜΔL等級が生まれたかについて説明したいと思います。
ΔL等級が生まれる前までは、床の防音性能を表現するための指標は遮音等級L値しかありませんでした。
そのため、床の防音性能を謳うメーカー各社は遮音等級L値を使ってその床材の防音性能を表示していたのですが、その際に「推定L等級」と呼ばれる表示が行われていました。
これは、実験室で計測した床衝撃音レベル低減量(床材の設置前後で低減できた音の量)から当時の「標準的条件」を仮定した実建物での遮音等級L値を推定したもののことです。
(要するに、「この床材を使うとこの程度の遮音等級L値になりますよ」という想定を表示していたということです。)
ですが、近年では実建物での躯体条件が多岐に渡るため「標準的条件による推定L等級」ではその床材の性能を正しく表示できなくなってきました。
そのような必要性から、「空間全体」を対象とした「遮音等級L値」ではなく、「床材」そのものを評価できる「ΔL等級」が誕生するに至りました。
要するに、床材の防音性能を正しく評価できる指標が無かったので作られた。ということです。
■ΔL等級の課題~まだあまり浸透していない~
ΔL等級には課題があります。
それは、まだあまり浸透していないということです。
先程解説した通り、ΔL等級は遮音等級L値の後に生まれた指標であるため、昔から床材の防音性能の表示には遮音等級L値が使われていました。
そのため、未だに多くの床材のメーカーが昔から馴染みのある遮音等級L値の方を使って床材の防音性能を表示している状況なのです。
いくらΔL等級の方が床材そのものの防音性能を表現するのに適していると言っても、そもそも床材のメーカーがΔL等級を表示していなければ、ΔL等級を使った防音性能の比較ができません。
もちろん、全く浸透していないわけではありませんが、もう少し浸透していって欲しいと思います。
■まとめ
ΔL等級とは、その床材の設置前後で床衝撃音をどれだけ低減できたか?を計測し指標にしたもの
ΔL等級は床衝撃音の種類に応じる形で2種類に分かれている
軽量床衝撃音に対応するΔL等級は「ΔLL等級」
重量床衝撃音に対応するΔL等級は「ΔLH等級」
ΔL等級は数字が大きい程性能が高いことを示す。
床材の防音性能の評価には元々「遮音等級L値」が使われていたが、床材の防音性能を示す指標としては不十分だったことから「ΔL等級」が生まれた。
■おまけ~ΔL等級は厳密に計測方法が決められている~
ここからはおまけです。
興味がある方は是非読んでみて下さい!
●床衝撃音レベル低減量試験とは
ΔL等級は「床衝撃音レベル低減量試験」という試験において測定されます。
「床衝撃音レベル低減量試験」は床材を対象に、床衝撃音を低減する効果を調べることを目的とした試験です。
この試験を行っている日本建築総合試験所での説明文を以下に引用します。
コンクリート床の素面及び床仕上げ材施工後の各状態について、標準衝撃源で床面を加振し下階の床衝撃音レベルを測定します。そして、床仕上げ材施工前後での床衝撃音レベルの差である床衝撃音レベル低減量ΔLを算出し、床衝撃音に対する緩和効果を評価します。
引用:日本建築総合試験所
要するに、床材の設置前後でどれだけ音が小さくなったか?を測定して評価する試験ということです。
(冒頭で画像付きで説明したことをしている試験ということです。)
●ΔL等級は厳密な規格
そんな「床衝撃音レベル低減量試験」ですが、この試験では測定条件を揃えるために部屋の大きさやスラブの厚さ、衝撃源の規格などが厳密に決まっています。
なぜ厳密に決まっているかというと、同じ床材でも計測する環境が違えば(スラブの厚さ・広さや天井の仕様など)異なるΔL(床衝撃音レベル低減量)が出てしまい、床材の公平な評価が出来なくなってしまうためです。
ですので、床材を開発する際に自社の実験室で得たデータなどでは「ΔL等級」を名乗ることは出来ないことに注意が必要です。
「ΔL等級」を計測するには日本建築総合試験所のような公的な第三者機関で試験をすることが必要となります。
しかしながら、そのようにしてΔL等級の規格が厳密に管理されているおかげで、ΔL等級が表示されている床材であればその防音性能を床材同士で公平に比較検討ができ、設計者目線では非常に便利な等級です。
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