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【図解】遮音等級L値とは?~空間の床衝撃音に対する遮断性能の等級~

  • 執筆者の写真: 将司 石畑
    将司 石畑
  • 4月14日
  • 読了時間: 7分

更新日:4月15日

みなさん、こんにちは!

超高性能乾式防振床「ドンナラン」の開発・設計・工事を行っている株式会社創和設計です。


みなさんは「遮音等級L値」を目にしたことはありますでしょうか。

もし、見かけたことがあるとすれば防音フローリングのカタログや防音マットのHPなどではないでしょうか。


正直に言ってあまり馴染みのないワードだと思います。


ですが、床の防音対策を考える人にとっては何度も目にするものですので、今回の記事では床の防音性能の表示に使われていることが多い「遮音等級L値」についてわかりやすく解説したいと思います。


記事の最後の方では遮音等級L値についてまとめた図解画像を用意しておりますので、是非最後までご覧ください。


■遮音等級L値とは?

遮音等級L値とは、空間の床衝撃音遮断性能を表す指標です。


これでは少しわかりづらいと思うので噛み砕いて言うと、

遮音等級L値とは、「上の階で床に物を衝突させた際に発生する音が、下の階でどれくらいの音の大きさで聞こえるか?」を等級にして表現したものです。


例えば、ある部屋で物を落下させた際に下階で生じる音の大きさが「60dB」だったとします。

この時の「下階での音の大きさ」を等級で評価したものが遮音等級L値です。

遮音等級L値のイメージ

※遮音等級L値の「LL」と「LH」については後程説明します。

※図では一つの音圧レベルから等級を決定しているように見えますが、実際には周波数毎の音の大きさを評価し等級を決定します。

⇒詳しい等級の決定方法は少し難しい内容になるので、別の記事で取り扱いたいと思います。


要するに、遮音等級L値は「床に物がぶつかった時の下階での音の聞こえにくさを表している」と考えれば問題ありません。


なお、音の聞こえにくさを表した等級なので、等級の数字が小さい程音が聞こえにくい(遮音性能が優れている)ということになります。


●遮音等級L値には2つの種類が存在する

遮音等級L値には「床衝撃音の種類」に応じる形で以下の2種類があります。

それが、「遮音等級LL」と「遮音等級LH」です。

遮音等級L値の種類について説明

「遮音等級LL」は軽量床衝撃音に対する遮音等級です。

⇒LLはLevel Light(レベルライト)の略

「遮音等級LH」は重量床衝撃音に対する遮音等級です。

⇒LHはLevel Heavy(レベルヘビー)の略


<床衝撃音の種類とは?>

ここで、床衝撃音の種類について簡単に説明しておきたいと思います。


床衝撃音とは、床に物が衝突した際に生じる音のことですが、この床衝撃音には2つの種類があります。


「軽量床衝撃音」はコインやスプーンなどの軽くて硬い物が床に衝突する際に発生する音で、

「重量床衝撃音」は足音や人が飛び跳ねた際に発生する柔らかくて重い物が床に衝突する際に発生する音のことです。


これらは同じ床衝撃音でも、音の特性が異なることから2種類に区別されています。

⇒床衝撃音の種類については詳しくはこちらの記事で解説しています。


そのため、遮音等級L値でも、「特性の異なる床衝撃音の種類」に応じて2種類に分かれているのです。


●遮音等級L値の見方

遮音等級L値は「LL-○○」「LH-○○」という形で記載されます。

○○の中には数値が入ります。

例:「LL-60」「LH-40」


こちらも図にしてみました。

遮音等級L値の見方の説明

先程も説明しましたが、遮音等級L値はその等級の数字が小さい程、その空間(部屋)の床衝撃音遮断性能が高いことを示します。


(下の階が静かであるほど優れているということ)

結構間違えやすいので注意が必要です。


●「遮音等級L値」と混同されやすい「Lr値」について

遮音等級L値と混同されやすいものとして「Lr値」があります。


「Lr値」はJISで規定されている床衝撃音遮断性能を表す等級で、

「遮音等級L値」は「日本建築学会」が規定した床衝撃音遮断性能を表す等級です。


何が違うのか?と言うと、内容にはほぼ違いはありません。


細かな違いはあるものの、ほぼ同じものなので意識して区別しなくても問題ありません。


●【まとめ】遮音等級L値の図解

以上が遮音等級L値の解説になります。

ここまでのまとめとして、解説内容を1枚の画像にまとめてみました。


遮音等級L値の解説まとめ

<ポイント>

  • 遮音等級L値は「遮音等級LL」と「遮音等級LH」の2種類に分かれている。

  • 等級の数字が小さい程性能が高いことを示す。



■【番外編】遮音等級L値の問題点~床材の防音性能の表示には向かない?~

ここからは番外編となります。

興味のある方はぜひ読んでみて下さい。


遮音等級L値は防音性能を謳う床材(防振床やフローリング、防音マットなど)の防音性能を表示する時に使われていることが多いのですが、実はこの時に表示されている遮音等級L値には注意が必要です。


なぜなら、その床材を現地に設置しても、その表示性能通りの遮音性能が発揮されない場合があるからです。


理由について説明します。


まず、床材の遮音性能を示す際に表示されている遮音等級L値は厳密には遮音等級L値ではなく、「推定L等級」というものになります。


「推定L等級」とは、「この床材を標準的な条件の建物で使った場合、この程度の遮音等級L値になるだろう」という推定の性能なのです。


そのため、実際にその床材を設置する建物の遮音性能が標準的な条件の建物よりも劣る場合は、表示されている遮音性能よりも低い性能が出てしまうのです。


ですので、防音性能を謳う床材(防振床やフローリング、防音マットなど)のホームページなどで「遮音等級LL35」などと表示されていたとしても、その通りの性能が常に出るとは限らないので注意が必要です。


図にまとめるとこのような感じです。


防音床材について遮音等級L値で表示されている通りの性能が発揮されない問題

●では、床材の防音性能をキチンと表示できる指標は?~「ΔL等級」が誕生~

遮音等級L値が床材の防音性能を表示するのに向いていないことがわかりました。

(そもそも床材の防音性能を表示することを目的としたものではないので当然ではあります。)


ですが、床材の防音性能をキチンと表示できる指標がないと、その防音床材の性能の比較検討をする際に困ってしまいます。


そこで、床材の防音性能を評価するための指標として「ΔL等級」が新しく生まれました。(ΔLは「デルタエル」と読みます)

⇒「ΔL等級」についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

「ΔL等級」と「遮音等級L値」は一見似ていますが、何が違うのでしょうか?


遮音等級L値とΔL等級の違いは、

「空間の防音性能」を対象にした指標なのか、

「床材の防音性能」を対象とした指標なのか、

という点が異なります。


まず、遮音等級L値は「空間の防音性能」を評価対象としています。

図にすると以下のような形になります。

遮音等級L値が評価する範囲の説明

しかし、ΔL等級では「床材の防音性能」のみを評価します。

図にすると以下のような形になります。

ΔL等級が評価する範囲の説明

これが両者の違いです。


ΔL等級はあくまでも床スラブの上に設置される床材のみの防音性能を評価する指標なのです。


このことからも、床材の防音性能を評価するには「ΔL等級」の方が向いていることがわかるのではないでしょうか。


遮音等級L値では空間全体を評価している都合上、どうしても床材以外の要素(建物躯体、天井など)が関わってきてしまうため、純粋に床材の防音性能のみを表現するのに向いていません。


■まとめ

  • 遮音等級L値とは空間の床衝撃音遮断性能を表す指標

  • 遮音等級L値はその等級の数字が小さい程、その空間(部屋)の床衝撃音遮断性能が高いことを示します。

  • 遮音等級L値は床衝撃音の種類に応じる形で2種類に分かれている

  • 軽量床衝撃音に対応するΔL等級は「遮音等級LL」

  • 重量床衝撃音に対応するΔL等級は「遮音等級LH」

  • 遮音等級L値は床材の防音性能を評価することに向いていない

  • ΔL等級は床材の防音性能を評価するために生まれた指標


■おまけ~遮音等級L値は厳密に計測方法が決められている~

ここからはおまけです。


気になった方は読んでいただければと思います!


●遮音等級L値は厳密に計測方法が決められている

遮音等級L値は、建物の遮音性能の評価の基準になるものとして日本建築学会によって規定されました。


そのため、その計測方法も厳密に決められており、「JIS A 1418-2」によって規定されています。

なぜ厳密に決まっているかというと、例えば衝撃源が少しでも違えば(衝撃源の重さ、勢いなど)異なる遮音等級L値が出てしまい、その空間の床衝撃音遮断性能の公平な評価が出来なくなってしまうためです。


ですので、遮音等級L値を計測する際の衝撃源はなんでも良いという訳ではなく、必ず決められた衝撃源を使う必要があります。(衝撃源はJIS A 1418-2で規格されています。)

例えば、重量床衝撃音に用いる衝撃源は「バングマシン」と呼ばれるものを使用することが多いです。

リオン株式会社製のバングマシンの画像

この装置はJIS A 1418-2に規定されている「標準重量衝撃源」の条件を満たすことができるように作られている装置で、毎回安定した衝撃力を床に加えることができるようになっています。


このように、遮音等級L値を測定するには厳密な測定が必要になっています。


遮音等級L値の測定方法などについてはまた別の記事で詳しく取り扱いたいと思います。

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