建築物の遮音性能基準はどうやって生まれたのか
- riku kawanaka
- 10月20日
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更新日:5 日前
― 日本の「JIS遮音等級」制定の背景を紐解く ―
私たちが日々暮らす住宅やオフィス、ホテル、学校など、あらゆる建物には「遮音性能(しゃおんせいのう)」という重要な性能があります。それは単なる“静けさ”を守るためのものではなく、プライバシーを守り、快適な生活環境を実現する基盤でもあります。
しかし現在のように「遮音等級」や「D値(Dr値)」といった明確な基準が整うまでには、長い年月と多くの専門家による検討の積み重ねがありました。本記事では、その遮音性能基準がどのように生まれたのかを、歴史的な経緯とともにご紹介します。
1. 遮音性能への関心が高まった背景
都市化が進み、住宅やオフィスが密集するようになった昭和40年代、日本でも「音のプライバシー」に関する意識が高まり始めました。しかし当時、日本の遮音技術や性能評価の体系は欧米に比べて遅れがあり、建築基準法にもわずかな音に関する項目があるだけでした。
つまり、「最低限の防音基準」はあっても、「快適な遮音性能を実現するための技術指針」や「明確な性能評価方法」は存在していなかったのです。
2. JIS遮音性能基準の策定へ
1974年に工業技術院は「建物の遮音性能をランク付けして明示する」ことを目的に、(社)日本音響材料協会に対してJIS(日本工業規格)遮音基準の調査・作成を委託しました。
この委員会では、実際の建物での遮音性能の実態調査や苦情発生の傾向を分析し、「室間音圧レベル差」と「床衝撃音レベル」という2つの主要な指標をもとに、遮音性能の等級体系を整理しました。
そして1975年(昭和50年)4月、「建築物の遮音性能基準(案)」が答申され、同年10月にはその中の音等級に関する部分が正式にJIS A 1419『建築物の音等級』として制定されました。
これにより、壁や床の防音性能を「D値」「L値」などの等級で比較できる統一的な基準が誕生したのです。
3. 学会による体系化と実用化
JIS制定後、その内容をさらに充実させるために、日本建築学会に「音基準作成分科会」が設置されました。分科会では、以下のような多角的な検討が行われました。
欧米諸国の規格や遮音性能データの調査
建物用途別の遮音性能と苦情発生の関係分析
測定規格(JIS A 1417、A 1418)に基づく性能評価法の整理
建物用途別の推奨遮音等級(設計指針)の策定
その成果は、1979年(昭和54年)に『建築物の音性能基準と設計指針』(日本建築学会)としてまとめられました。この指針は現在に至るまで、日本の防音設計の基礎資料として広く活用されています。
4. 外部騒音と内部騒音、それぞれの基準
遮音性能の基準は大きく分けて2種類あります。
外部騒音対策:道路・鉄道・航空機・工場など、建物外からの音に対する「外壁」「窓」などの遮音性能。
内部騒音対策:集合住宅・ホテル・事務所・学校などで、隣戸や上下階からの生活音・設備音に対する「界壁」「界床」「間仕切壁」などの遮音性能。
外部騒音の遮音量は、周囲の環境騒音レベルと、室内で許容できる音の大きさ(許容騒音レベル)によって決まります。一方、内部騒音の基準は、建物の用途や生活パターンに基づき、苦情発生率や実測データをもとに統計的に設定されています。
5. 現代の防音工事と遮音基準の関係
現在では、防音室や住宅防音工事を行う際に、「D-50」「L-55」などのJIS等級を指標に設計を行うのが一般的です。創和防音でも、防音室の設計・施工時には必ずこの基準に準拠した遮音性能を確認し、測定結果をお客様に「数値」と「体感」の両面でご説明しています。
単に「静かにする工事」ではなく、法的・学術的な基準に基づいた性能保証を行うこと。これこそが、創和防音の防音工事における信頼の根幹です。
まとめ:遮音基準は「快適さの科学」
遮音性能基準は、単に「音を止めるためのルール」ではありません。都市生活における人々の快適さや安心、プライバシーを守るための科学的な指標です。
創和防音では、JISや建築学会の基準を踏まえた上で、現場の条件に合わせた最適な設計を行い、お客様が実際に「静かで快適だ」と感じられる空間づくりを行っています。
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〈この記事を書いたライター〉 創和防音 編集部
創和防音は一級建築士・騒音振動公害防止管理者・一級施工管理技士など建築のエキスパートをはじめ、音楽大学卒業・元大手楽器メーカー勤務の楽器のエキスパートが在籍する防音工事専門会社です。



