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防音性を重視した窓ガラスの選び方について解説します。~防音ガラスの種類や効果なども紹介~

みなさん、こんにちは!


大阪を中心に関西の防音室の設計・工事をしている創和防音です。


部屋の防音を考えた場合、最も弱点となる箇所は窓や扉などの開口部です。


特に、外からの騒音や外へ漏れる騒音を対策したい場合は建物の構造的に外に面していることが多い窓が部屋の防音性能上最もネックとなります。


そんな窓の防音対策を考えた場合、最も効果的な対策は「二重窓工事」をすることです。


二重窓工事とは既存の窓の内側にもう一つ窓を設けることです。

二重窓工事の説明

二重窓にすることで防音性能や断熱性能を向上させることが出来ます。


しかし、二重窓の「ガラス」はどんなものでも良いのでしょうか?


窓のガラスには実は様々な種類があり、窓ガラス自体に断熱性能や防音性能が付加された製品が展開されています。(防災・防犯性能を高めた製品もあります)


そんな沢山の種類がある窓ガラスを「防音性を重視して選定する場合」どんなことに気を付ければ良いのでしょうか。


この記事では窓の防音を考えている人のために「防音性を重視した窓ガラスの選び方」について解説します。


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■窓ガラスの防音性能を向上させる2つの方法

「防音性を重視した窓ガラスの選び方」は「窓ガラスの防音性能を向上させる方法」を知ることで理解することが出来ます。


ここでは以下の2つの「窓ガラスの防音性能を向上させる方法」についてひとつずつ解説していきます。


<窓ガラスの防音性能を向上させる方法一覧>

①ガラスの厚みを厚くする

②「合わせガラス」を使用しガラスの厚みを異なる組み合わせにする


①ガラスの厚みを厚くする

窓はガラスが厚いほど防音性能が高くなります。

ガラスの厚みによる防音性能の違い

これは、「質量則」と呼ばれる「重たい物程遮音性能が高くなる」という法則に依存するためです。

⇒「質量則」についてはこちらの記事で詳しくはこちらの記事で解説していますので興味がある方は是非読んでみてください。


ガラスの厚みが厚いほど重量が増すため、「質量則」によって遮音性能を高めることができます。


そのため、防音性能の高い窓ガラスを選ぶ際にはなるべく厚いものを選択することが重要になります。


しかし、厚過ぎるとその厚みに対応するサッシが高額なものになったり、重量や金額も増しますので必要とする防音性能と相談しながら適切な厚みのガラスを選定する事も大切です。


②「合わせガラス」を使用しガラスの厚みを異なる組み合わせにする。もしくは「特殊中間膜」を使用した合わせガラスを選定する。

合わせガラスとは、ガラスを2枚張り合わせたガラスのことを言います。

合わせガラスの画像

張り合わせるガラスの間にガラス同士を接着するための中間膜があり、万が一ガラスが割れた場合には中間膜によってガラスの破片の飛散を防止したり、中間膜に紫外線をカットさせる機能を持たせたりと通常の単板ガラスに比べて高機能であることが特徴です。


防音性能の観点においても、合わせガラスを使用することで防音性能を高めることが期待できます。


しかし、単純に合わせガラスであれば防音性能が高くなるという訳では無く、合わせガラスそれぞれの厚みの組み合わせが重要です。

合わせガラスの組み合わせによる防音性能の違い

上の画像の通り、合わせガラスの防音性能はそれぞれのガラスの厚みの組み合わせが異なる方が防音性能が上がります。


これは「コインシデンス効果」というものが関係しています。


「コインシデンス効果」とは、それぞれの物体が持っている固有振動数において音を増幅してしまい、特定の周波数帯において遮音性能が下がる現象のことです。

⇒「コインシデンス効果」についても詳しくは先程と同じこちらの記事で解説していますので興味がある方は読んでみてください。


しかし、合わせガラスの厚みを異なる組み合わせにすることで、それぞれの固有振動数も異なる組み合わせとなり互いに互いの遮音低下を補い合うため、コインシデンス効果による遮音性能の低下を抑制することが出来るのです。


これが合わせガラスの厚みを異なる組み合わせにすることで防音性能が高まる理由です。


しかし、実際に各社メーカーが展開している合わせガラスを見てみると、同じ厚みの組み合わせのものも多いです。


これは、合わせガラスの中間膜にコインシデンス効果を抑制する効果を持たせた「特殊中間膜」というものがあり、これを使用すれば同じ厚みの組み合わせにしてもコインシデンス効果による遮音性能の低下が起こりづらいためだと思われます。


合わせガラスを選ぶ際はいずれにしても「コインシデンス効果」を抑制する策が取られているかを確認する事が重要です。


 

■防音性能が高い窓ガラスの選び方

窓の防音性能を向上させる2つの方法それぞれについて解説しましたが、これらをまとめると防音性能が高い窓ガラスの選び方がわかります。


つまり、防音性能が高い窓の選び方は

  • ガラスの厚みが厚いものを選ぶ

  • 合わせガラスを選択し、厚みの組み合わせが異なるものを選ぶ。もしくはコインシデンス効果を抑制する特殊中間膜が使用されている合わせガラスを選定する。

ということになります。

防音性能の高い窓ガラスの条件

画像にするとこのようになります。


 

■防音性能の高い窓ガラス(防音ガラス)の紹介

防音性能の高い窓ガラスの条件がわかったところで、実際にメーカーから展開されている窓ガラスの中から防音性能の高い窓ガラスを紹介していきたいと思います。


●ラミシャット(合わせガラス防音タイプ)

一つ目はAGC株式会社のラミシャットです。

ラミシャットの画像

こちらは合わせガラスであり、ガラス同士は異厚にはなっていませんが中間膜にコインシデンス効果を抑制する特殊中間膜を使用することで防音性能を向上させています。


また、「ラミシャット35のL8」では厚み8mm程度に関わらずT-3等級(※)を達成しており非常に高性能であると言えます。


同じ厚みの単板ガラスではT-2等級程度であることを考えると合わせガラスにすることによる遮音性能の向上効果がはっきりと表れていることがわかります。


※T-3等級は窓や扉の遮音等級であるT等級のことです。数字が大きい程遮音性能が優れることを示します。


●マイミュート(レゾネーター搭載 防音複層ガラス)

二つ目はAGC株式会社のマイミュートです。

マイミュートの画像

こちらは複層ガラスと呼ばれる、ガラスとガラスの間に中空層という空間を持たせた「中空構造」のガラスです。


複層ガラスでは片側のガラスに「Low-E膜」と呼ばれる特殊な金属膜をコーティングすることで遮熱及び断熱効果を付加できることと、中空層の存在により断熱効果が高められることから断熱性能が高いことが特徴です。


そんな高性能な複層ガラスですが、防音性能については性能が低い傾向にあります。


例えば、同じ厚みの単板ガラスよりも複層ガラスの方が防音性能は劣っていることが多いです。


これには「共鳴透過現象」というものが関係しています。


「共鳴透過現象」とは「中空構造」において発生する現象で、2枚の板状材料それぞれの質量と中空層の空気がバネとして働くことで共振が起こり、特定の低音域で透過損失が減少して遮音性能が低下するというものです。


しかし、先程紹介した「マイミュート」はレゾネーターと呼ばれる構造を搭載することで「共鳴透過現象」を防ぎ遮音性能の低下を防いでいます。


実際にどの程度遮音性能の低下を防いでいるかと言うと、同じ厚みの単板ガラスと同程度の遮音性能を有しており、ほぼ「共鳴透過現象」による遮音性能の低下を防ぐことが出来ています。

(※厳密には「共鳴透過現象」によって遮音性能が低下する特定周波数帯で比較すると単板ガラスより最大で3dB程度劣っていましたが、高い周波数帯ではマイミュートの方が遮音性能が優れているため、平均すると比較して同程度の遮音性能となるようです。)


このことから、「マイミュート」では複層ガラス特有の問題である遮音性能の低下を気にすることなく断熱性能の高い複層ガラスを使用することが出来ると考えて良いと思います。


 

■弊社では二重窓工事も承っています。

ガラスには様々な種類があり、防音性能だけではなく断熱性能や防災・防犯性能を高めた製品など、その種類は多岐に渡ります。


弊社では二重窓工事のご依頼も承っていますので、ご依頼頂いた際にはお客様のニーズや部屋の環境、予算などに合わせて最適な窓ガラス(サッシ含む)の選定をさせて頂きます。 ⇒弊社の二重窓工事の施工事例はこちらからご覧いただけます。


窓の防音対策でお悩みの方は是非一度ご相談下さい!



 

■まとめ

  • 防音性能の高い窓ガラスの選び方は、 ①ガラスの厚みが厚いものを選ぶ ②合わせガラスを選択し、厚みの組み合わせが異なるものを選ぶ。もしくはコインシデンス効果を抑制する特殊中間膜が使用されている合わせガラスを選定する。

  • 複層ガラスでは基本的に防音性能が下がってしまうが、防音性能の低下を防いだ複層ガラスも存在する(マイミュートなど)


 

■おまけ~なぜ「複層ガラス」の防音性能は低い?~

ここでは本編で書ききることが出来なかったことをまとめています。

興味がある方は是非読んでみてください。


●「複層ガラス」とは

複層ガラスとは2枚のガラスで構成され、その間に「中空層」という空間を持っているガラスのことで、この「中空層」により断熱性能を高めることができ、通常の単板ガラスよりも高性能であることが特徴です。

複層ガラスの画像

このような「中空層」をもつ構造のことを「中空構造」と呼び、この構造は窓ガラスに限らず壁や天井などの防音性能も高めることが期待できます。


⇒「中空構造」についてはこちらの記事で解説していますので興味がある方は読んでみてください。


しかし、複層ガラスは一般的に同じ厚みの単板ガラスよりも遮音性能が劣ると言われています。


本来、遮音性能を高めることが出来る中空構造を持っているはずなのになぜなのでしょうか?


これについて解説していきたいと思います。


●「複層ガラス」の遮音性能が低くなる理由について

まず、中空構造では単に「中空層」を設ければ防音性能が上がるという訳では無く「中空層」の広さが重要になります。


下の画像を見てください。

複層ガラスの中空層の広さによる防音性能の違い

画像の通り、複層ガラスは中空層が広い程防音性能が高まります。


これには「共鳴透過現象」というものが関係しています。


⇒「共鳴透過現象」についても「中空構造」の記事の中で詳しくはこちらの記事で解説していますので興味があったら読んでみてください。


「共鳴透過現象」とは中空構造において発生する現象で、2枚の板状材料それぞれの質量と中空層の空気がバネとして働くことで共振が起こり、特定の低音域で透過損失が減少して遮音性能が低下するというものです。


この共鳴透過現象は中空層が狭い程、高い周波数帯及び人間の聴覚が敏感な周波数帯で遮音性能が低下するため、中空層が狭い場合は単板ガラスよりも遮音性能が劣ることがあるのです。


そのため中空構造によって遮音性能を向上させる場合には中空層の広さに十分に注意が必要になります。


しかしながら、複層ガラスはほとんどの場合、遮音性能の向上に寄与するほど中空層を広く取っているものはありません。


むしろ、複層ガラスの中空層は遮音性能の向上の観点から見た場合狭いのです。


複層ガラスはこれによって中空構造を持っているのにも関わらす遮音性能が低下していたのです。


複層ガラスを選ぶ際は遮音性能の低下に注意しましょう。


●中空層の広さを十分にとった遮音性能の高い複層ガラスはある?

理論上、複層ガラスでも防音性能を高めることは出来ますが、その場合中空層の広さをかなり広く取る必要があります。


しかし、その場合その厚みに対応したサッシ(窓ガラスの枠)が必要になりますが、そのような特殊なサッシを用意するのは大変です。


また、広い中空層を取るのであれば、複層ガラスにこだわらなくても二重窓にすれば良いので、防音性能の向上のために複層ガラスの中空層を広く取るという選択肢はあまり取られないのだと思われます。


そのため、中空層の広さを十分にとった遮音性能の高い複層ガラスはほとんどありません。

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